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最高裁判所第三小法廷 昭和30年(あ)3499号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人中間保定、同保津寛の上告趣意第一点について。

なるほど、本件起訴状に公訴事実第一(二)として、論旨引用のとおりの記載があるが、しかし、右記載は事実を特定して訴因を明示してなされているものであることその記載に徴し明白であって、引用の高等裁判所判例は事案を異にし本件に適切でない。また、これに対し、原判決の肯認した第一審判決は訴因の追加変更若くは訂正をすることなく、第一(二)(イ)(ロ)として論旨引用のとおりの各窃盗の事実を認定したこと記録上明白であるが、これによれば、被告人が判示の月下旬頃他人と共謀の上判示倉庫において落綿一一俵を窃取したとの基本的事実関係においては公訴事実と一審判決認定事実との間に同一性があるということができ、そして、一審判決は、被告人が右窃盗のほか、別に、起訴状の公訴事実第二に基き、第二事実として、被告人が名港倉庫において焼綿一八俵を窃取した事実をも認定していることまた記録上明らかであるから、同判決が所論起訴状第一の(二)の事実を二個の窃盗と認めても、これを一個の窃盗と認めた場合と同様、これらは右別個の一八俵の窃盗及び一審判決判示第一の暴行と相まって刑法四五条前段の併合罪を構成し、しかも窃盗罪の刑に併合罪の加重を施した刑期範囲をもって本件量刑の法律上の範囲とすることに変りはないから、同判決が前記のように第一(二)(イ)(ロ)の各窃盗を認定しても、被告人の防御に実質的不利益を生ずる虞がないということができる。してみれば、結局原判決には所論のような判例違反若くは判決に影響を及ぼすべき法令違反はなく、論旨は採用できない。

同第二点は刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三)

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